膜構造とは
膜構造とは膜材料の特徴を生かした軽快かつ柔軟性に富んだ構造形式である。
膜構造のはじまり
PTFE(四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布)を使用した世界ではじめての恒久建築膜屋根
1973年に米国カリフォルニア州「ラバーン大学の学生センター」に使用されたPTFE膜(四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布)が、恒久膜構造建築物に使用された最初の膜といわれております。40年以上たったいまでも、その耐候性の記録を更新中です。
建設場所 | 米国カリフォルニア州 |
建設時期 | 1973年(47年経過) |
膜構造 | サスペンション構造 |
膜材料 | シィヤフィルⅠ(1mm)/四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布 |
膜屋根の構造形式
骨組膜構造
鉄骨等の骨組に膜材料を張り、膜に張力を導入して骨組と膜材料が一体となって荷重・外力を負担する構造
サスペンション膜構造
構造用ケーブルに膜材料を張り、ケーブルと膜材料とが一体となって荷重・外力を負担する構造
空気膜構造
鉄骨等の構造体を必要とせず、空気の圧力を利用し膜材料に張力を導入して、荷重・外力を負担する構造
※現在は大臣認定のみ可能
膜材料の種類
名称 | 膜材A種(テフロン膜) | ETEF | 膜材B種 | 膜材C種 |
質量 | 1000〜1500g/㎡ | 350~870g/㎡ | 780g/㎡ | 300〜900g/㎡ |
厚さ | 0.6〜1.0mm | 0.2~0.5mm | 0.55mm | 0.6〜0.8mm |
引張強度 | 300〜500kg/3cm | 40N/mm2(40MPa)以上 | 250〜300kg/3cm | 60〜200kg/3cm |
伸び率 | 4〜13% | 300%以上 | 8% | 15〜30% |
引裂強度 | 15〜40kg | 160N/mm以上 | 15kg | 4〜50kg |
透光率 | 12〜25% | 0~91% | 13%(アイボリーの数値) | 0〜70% |
耐候性 | 30年以上 | 30年以上 | 10〜15年 | 10〜15年 |
自浄性 | ◎ | ◎ | △ | △ |
取得認定 | 不燃 | 防火 | 不燃 | 防炎 |
膜材仕様 | ガラス繊維布*四フッ化テフロンコーティング | フッ素樹脂 | ガラス繊維布*PVCコーティング | ポリエステル繊維布*PVCコーティング |
カラーバリエーション | 白のみ(特注複数色可) | 透明、白(印刷が可能) | 10色程度 | 多種あり(透光性の高い半透明もある) |
特性等 | 耐候性、自浄性、不燃性など物性面で圧倒的に優れているが、加工・施工が大変難しい。また曲面形状で設計されることが多く、有限要素法を用いるなどの高度な解析手法が要求される。加工・施工共に対応可能なメーカーは少ない。 | 透光性・透明性が高く、紫外線劣化に強い。印刷を施す事により、透光性・透明性の調整が可能となり、またデザイン性も他の膜材より豊富である。クッションTYPEでは、空気層により断熱効果を有する膜構造となる。 | 生織(キバタ・コーティング前の生地)にガラス繊維を使用しているため、C種膜材に比べ強度が強い。しかしその反面ガラス繊維のため、取り扱いに注意が必要である。一般的な膜材で加工性、施工性は優れているが、耐候性、自浄性の点で劣り、簡易的な使用が中心である。多くのメーカーで対応可能。 | 一般的な膜材で加工性、施工性は優れているが、耐候性、自浄性の点で劣り、簡易的な使用が中心である。多くのメーカーで対応可能。 |
構造上の特性 | 膜材の剛性が高いため、大スパンでの設計が可能。その反面、下部構造に要求する反力も大きくなる。 | テンションTYPEとクッションTYPEの2種類が有る。繊維が入っていない為、高度な設計技量が必要となる。 | 膜材の剛性が高いため、大スパンでの設計が可能。(A種よりは劣る) | 膜材の剛性が低いため、荷重を下部構造に依存しなければならず、大スパン設計は難しい。形状、設計条件にもよるが、基本的に「骨組み鉄骨の上に膜材を架ける」というイメージになる。 |
A種膜材料(四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布)
A種膜材料の構成
この膜材料は、透明性とともに不燃性能、耐久性能、軽量性、高強度をもち、恒久建築としての大空間架構に適した材料となっている。この材料がスポーツ空間等の屋根構造として世界的に普及し始めて約47年経過している。(ラバン大学学生センター1973年)
膜材料はガラス繊維糸を織り繊維布としたもの、コーティング剤としての四フッカ化エチレン樹脂(テフロン)および充てん材(ガラスビーズやフレーク)より構成されている。織布は主に強度を負担し、コーティング剤は防水、耐久性、防火性に寄与しガラスビーズは耐摩耗性を強化している。
膜材料の接合
A種膜材料の性質
耐久性 | 耐久性はステンレススチール程度と考えられる。 これまでの実績はアメリカで1973年に建設後47年経過している 日本では1984年最初に建設されてから36年経過している。 |
強度 | 3cm幅でタテ糸300〜550kg/m、ヨコ糸320〜500kg/mあり、これ以上の強度が必要な場合はワイヤーロープ等で補強が必要。 |
表面浄化性 | テフロン自体自浄性があり表面は汚れにくい。さらに近年酸化チタンを表面コーティングすることにより浄化性を強化している。 |
不燃性 | 不燃材認定品 |
透光性 | 光線透過率10〜25%、熱の侵入と光線の取り込みの範囲で決める。 |
軽量性 | 重さ約1.0〜1.5kg/㎡ |
遮音性 | 薄く、軽い素材のため遮音性は劣る。膜天井との併用で改善。 |
接着性 | テフロン樹脂をコーティングしているため、モノが付着しにくい。膜と膜を接着させるには熱板を使用し接着させる。 |
断熱性 | 膜材料は薄く、通常1枚で張るため断熱性は劣る。膜天井との併用で改善。 |